ちくわ君と学ぶ成長の階段

森の研究所で、はんぺん君は机に突っ伏して深いため息をついていた。机の上には開いたままの参考書が山積みになっており、彼の表情は疲れ切っていた。

「はんぺん君、どうしたんだい?」ちくわ君が赤い木の実を手に持ちながら、心配そうに声をかけた。

「ちくわさん...」はんぺん君は顔を上げた。「最近、勉強がとても辛くて。プログラミングも数学も、覚えることがたくさんありすぎて、もう何から手をつけていいかわからないんです」

ちくわ君は優しく微笑んで、はんぺん君の隣に座った。「そうか。実は僕も昔、同じような気持ちになったことがあるよ」

「えっ、ちくわさんもですか?」はんぺん君は驚いた。ちくわ君はいつも自信に満ちていて、何でも知っているように見えていたからだ。

「もちろんさ。僕が初めてプログラミングを学び始めた頃、毎日挫折の連続だった。エラーメッセージの意味がわからなくて、一つのプログラムを動かすのに何日もかかったりしてね」

ちくわ君は木の実を一つ口に含んでから続けた。「でも、ある日気づいたんだ。学習っていうのは、高い山を一気に登ろうとするものじゃない。小さな階段を一段ずつ上がっていくものなんだって」

「階段ですか?」

「そう。例えば今日、はんぺん君は何か一つでも新しいことを学んだかい?」

はんぺん君は考えた。「えーと...今朝、for文の使い方を少し理解できました。でも、まだまだ全然できないことばかりで...」

「それは素晴らしい!」ちくわ君は目を輝かせた。「昨日のはんぺん君は、for文のことを知らなかった。でも今日のはんぺん君は知っている。確実に一段階段を上がったんだよ」

はんぺん君は少し驚いた。「でも、ちくわさんと比べると、僕はまだまだ...」

「比べる相手を間違えているよ」ちくわ君は穏やかに言った。「君が比べるべきは僕じゃない。昨日の君自身なんだ」

ちくわ君は研究所の窓を指差した。外では大きな樫の木が風に揺れている。「あの樫の木を見てごらん。あれも最初は小さな種だった。でも毎日少しずつ、見えないほど小さな成長を続けて、今の立派な姿になったんだ」

「学習も同じなんだよ。今日理解できたfor文は、明日のより複雑なプログラムの基礎になる。そして来月には、今日の君には想像もできないようなものを作れるようになっているかもしれない」

はんぺん君の目に希望の光が宿り始めた。「でも、時々心が折れそうになります...」

「それも自然なことだ」ちくわ君は頷いた。「僕も今でも、新しいことを学ぶときは不安になる。でもね、その気持ちこそが成長のサインなんだよ」

「成長のサインですか?」

「挑戦しているから不安を感じる。新しいことを学ぼうとしているから混乱する。もし何も感じていなかったら、それは成長が止まっている証拠かもしれない」

ちくわ君は新しい木の実を取り出して、はんぺん君に差し出した。「これを食べて、少し休憩しよう。そして、今日学んだfor文を使って、簡単なプログラムを一つ作ってみないかい?」

「はい!」はんぺん君の声に元気が戻った。

二匹は一緒にパソコンの前に座った。ちくわ君は見守りながら、はんぺん君が小さなプログラムを書くのを手伝った。エラーが出るたびに、ちくわ君は「これも学習の一部だよ」と励ました。

一時間後、はんぺん君のプログラムが初めて正しく動いた。画面に「Hello, World!」が10回表示される。単純なプログラムだったが、はんぺん君にとっては大きな成果だった。

「やりました!ちくわさん、動きました!」はんぺん君は嬉しそうに飛び跳ねた。

「おめでとう!また一段階段を上がったね」ちくわ君は心から嬉しそうに微笑んだ。「この感動を忘れないでほしい。これが学習の醍醐味なんだ」

はんぺん君は改めて気づいた。確かに一週間前の自分は、for文が何なのかさえ知らなかった。今の自分は、簡単とはいえプログラムを書いて動かすことができる。

「ちくわさん、ありがとうございます。急に全部できるようになろうとしていました。でも、毎日少しずつ成長していけばいいんですね」

「その通りだ。そして忘れないでほしいのは、君には無限の可能性があるということ。今日学べなかったことも、明日なら理解できるかもしれない。時には休息も必要だし、回り道をすることもある。でもそれら全てが、君を成長させてくれるんだ」

夕日が研究所を照らし始めた頃、はんぺん君は満足そうに立ち上がった。「明日も頑張ります!今度は配列について勉強してみます」

「素晴らしい目標だね。でも無理は禁物だよ。楽しみながら学ぶことが一番大切なんだから」

はんぺん君が帰った後、ちくわ君は窓の外の樫の木を見上げた。明日もまた、小さな成長の種を蒔く一日が始まる。学習の喜びを分かち合えることが、彼にとって何よりも幸せだった。

森の研究所には、今日も学びと成長への希望が満ちていた。

成長 モチベーション 学習 友情