ちくわ君と学ぶ株① 株ってなんだろう

秋の午後、森の研究所では、ちくわ君が赤い木の実をかじりながら、のんびりと経済のニュースを眺めていた。

「ちくわさん!大変です!」勢いよく扉が開いて、はんぺん君が目をきらきらさせて駆け込んできた。「さっき森の広場で聞いたんです。『株を買えば大儲けできる』って!僕、お小遣いで株を買って、ドングリを山ほど買えるお金持ちになります!」

ちくわ君は木の実を置いて、にっこり笑った。「やる気は素晴らしいね。でもはんぺん君、その『株』が一体何なのか、もう知っているのかい?」

「えっ……。か、株は……その、買うと増えるもの、ですか?」はんぺん君は急にもじもじし始めた。

「ふふ、正直でよろしい。儲かるか儲からないかの前に、まず株が何なのかを知るのが先だね。これはお金の話というより、『会社の仕組み』の話なんだよ。今日はそこから始めよう」ちくわ君は楽しそうに椅子をはんぺん君のほうへ向けた。

「はい!お願いします!」

「たとえばの話だ。はんぺん君が、とびきりおいしいドングリジュースを思いついて、お店を開きたくなったとしよう。でも、ジューサーを買って、お店を借りて……と、ぜんぶ揃えるには百個のドングリが必要だった。はんぺん君の手元には、二十個しかない。さあ、どうする?」

「うーん……足りない八十個を、どこかから借りてくるしかないですね」

「借りる、というのも一つの手だね。でも、借りたお金は利子をつけて返さないといけない。そこで、もう一つのやり方がある。友達に『一緒にこのお店のオーナーにならない?』と声をかけて、お金を出し合ってもらうんだ」

「オーナーに、ですか?」

「そう。たとえば、おもち君、ぼんじり君、ホー博士の三人が、それぞれドングリを集めてくれたとする。みんなで出し合って、ちょうど百個集まった。このとき、お金を出してくれた証として渡すのが『株』なんだ。株は『あなたはこの会社のオーナーの一人ですよ』という証明書のようなものだよ」

ちくわ君はホワイトボードに、お店とみんなの関係を描いた。

株主 お金を出した人たち 会社 ドングリジュース店 お金を出す(出資) 株(オーナーの証)を渡す 稼いだ利益の一部 配当として分ける
図:株主はお金を出し、その証として株を受け取る。会社が稼げば、利益の一部が配当として戻ってくる

「なるほど!株を持っているっていうのは、その会社のオーナーの一人だってことなんですね。借りたお金とは違うんだ」

「その通り。ここが一番大事なところだよ。株を買うというのは、宝くじを買うことでも、ギャンブルでもない。『その会社のオーナーの一人になる』ということなんだ。じゃあ、オーナーになると、どんないいことがあると思う?」

「うーんと……自分のお店だから、ジュースが売れた儲けを、分けてもらえるんじゃないですか?」

「大正解!それが一つ目、『配当』だ。会社が稼いだ利益の一部を、株を持っている数に応じて分けてもらえる。出したお金が多い人ほど、たくさん受け取れる仕組みだね」ちくわ君は木の実を一つ口に放り込んだ。

「二つ目はね、『会社の決めごとに口を出せる権利』だ。オーナーの一人だからね。『新しい味のジュースを出そう』とか『お店をもう一軒増やそう』とか、大事なことを決めるときに、株主として一票を投じられるんだ」

「へえ!お金を出すだけじゃなくて、お店の方針にも関われるんですね」

「そして三つ目。これがはんぺん君の言っていた『儲け』に一番近い話だ。もし、はんぺん君のジュース店が大人気になって、『そのお店のオーナーになりたい』という人が増えたらどうなると思う?」

「えっと……みんながオーナーになりたがるなら、僕の持っている株を『譲ってほしい』って言われるかも……あっ!最初に出した二十個より、高く譲れるかもしれない!」

「お見事。それが三つ目、『値上がり益』だよ。人気が出て、その会社の株を欲しがる人が増えれば、株の値段は上がる。安いときに持っていた株を、高くなってから誰かに譲れば、その差額が儲けになるんだ」

「なるほど……!『株で儲かる』って、こういうことだったんですね。なんだか、ちゃんと意味のある仕組みなんだ」はんぺん君は感心して尻尾を振った。

「そうなんだ。株式会社という仕組みは、『いい考えはあるけれどお金が足りない人』と、『その考えを応援したい人』を結びつける、とても優れた発明なんだよ。世の中の大きな会社は、たくさんの人から少しずつお金を集めて、大きなことを成し遂げているんだ」

ちくわ君はそこで、少し真剣な顔になった。「ただし、はんぺん君。今日のうちに、これだけは必ず覚えておいてほしいことがある」

「はい、なんでしょう?」はんぺん君は背筋を伸ばした。

「株は、必ず儲かるものではない。むしろ、損をすることもあるんだ。考えてもごらん。もしジュース店の売れ行きが悪くなったら、配当は出せなくなる。お店のオーナーになりたい人も減って、株の値段は下がってしまう。会社がつぶれてしまえば、出したお金は戻ってこないこともある。『大儲けできる』という話の裏には、必ず『損をするかもしれない』という危険が、表と裏みたいに張りついているんだよ」

「そっか……。さっきの広場の話、『大儲け』のところしか聞いていませんでした」はんぺん君は少し神妙になった。

「いいことに気づいたね。だからこそ、仕組みをきちんと知ってから付き合うことが大切なんだ。株を『よく分からないけど儲かりそうなもの』として買うのと、『会社を応援して、その成長を一緒に分かち合う仕組み』として理解して付き合うのとでは、まるで違うからね」

「はい!今日で、株がぐっと身近になりました。会社を応援する仕組みなんですね」

「その意気だよ。今日のところは、株が『会社のオーナーになる証』で、『配当』『議決権』『値上がり益』の三つがあること、そして『損もする』こと。これだけ分かれば上等だ」

「ちくわさん、ありがとうございました!……あっ、でも一つ気になります。さっき『人気が出ると株の値段が上がる』って言いましたよね。その値段って、誰が、どうやって決めているんですか?」

ちくわ君は嬉しそうに目を細めた。「はんぺん君、それこそが次の大きなテーマだよ。株の値段がどうやって動くのか――それはまた、次の機会にゆっくり話そう。今日の話を、まずはよく噛みしめておいで」

「はい!次もぜったい教えてください。楽しみにしてます!」はんぺん君は元気よく手を振って、秋の森へ駆けていった。

一人になったちくわ君は、窓の外でゆれる木々を眺めた。お金の話を、損得だけでなく、仕組みのおもしろさとして伝えられた。そう思うと少し心が弾んで、ちくわ君は新しい赤い木の実へ手を伸ばした。

森の研究所には、今日も学びの秋の気配が満ちていた。

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