ちくわ君と学ぶLDA

森の研究所で、ちくわ君は大量のテキストデータと格闘していた。机の上には赤い木の実が山盛りになっており、難しい問題に取り組むときの彼の習慣だった。

「ちくわさん、こんにちは!」はんぺん君が元気よく研究所に入ってきた。「今日は何の研究をされているんですか?」

「やあ、はんぺん君。今日はLDAというアルゴリズムについて調べているんだ」ちくわ君は振り返って微笑んだ。「君も興味があるかい?」

「LDA?」はんぺん君は首をかしげた。「また新しい単語ですね。どんなものなんですか?」

ちくわ君は木の実を一つ口に含んでから説明を始めた。「LDAは『Latent Dirichlet Allocation』の略で、日本語では『潜在ディリクレ配分法』と呼ばれているんだ」

LDAって何をするもの?

「難しい名前ですね...」はんぺん君は困った顔をした。

「名前は難しいけれど、やっていることはとてもシンプルなんだよ」ちくわ君はホワイトボードに向かった。「LDAは、たくさんの文書の中から『隠れたトピック』を見つけ出すアルゴリズムなんだ」

「隠れたトピックですか?」

「そう。例えば、新聞記事が1000件あったとしよう。人間が読めば、政治、スポーツ、経済、エンターテイメントなどのカテゴリーに分けられるよね?」

「はい、それはできそうです」

「でも、コンピューターには最初からそのカテゴリーがわからない。そこでLDAを使うと、文書の中にある単語の出現パターンから、自動的にトピックを発見してくれるんだ」

具体的な例で理解しよう

ちくわ君はボードに例を描き始めた。「具体的に考えてみよう。3つの文書があったとして...」

「文書1: 『サッカーの試合でゴールを決めた選手が素晴らしいプレーを見せた』」
「文書2: 『新しい経済政策が発表され、株価が上昇している』」
「文書3: 『バスケットボールの選手が見事なシュートを決めた』」

「この3つの文書を見ると、人間なら『スポーツ』と『経済』という2つのトピックがあることがわかるよね?」

「確かに!文書1と3はスポーツ、文書2は経済ですね」はんぺん君は納得した。

「LDAも同じように、『サッカー』『ゴール』『選手』『プレー』『バスケットボール』『シュート』という単語が一緒に出現するパターンからスポーツトピックを見つけ出し、『経済』『政策』『株価』という単語のパターンから経済トピックを発見するんだ」

どうやって動作するの?

「でも、コンピューターはどうやってそれを判断するんですか?」はんぺん君は疑問を口にした。

「いい質問だね!」ちくわ君は新しい木の実を手に取った。「LDAは確率的なモデルなんだ。簡単に言うと、『この単語が出てきたら、このトピックの可能性が高い』という確率を計算している」

「例えば、『ゴール』という単語が出てきたら、スポーツトピックの確率が80%、経済トピックの確率が20%、といった具合にね」

「なるほど!でも、最初はその確率もわからないですよね?」

「その通り!だからLDAは反復的に学習するんだ」ちくわ君は図を描きながら説明した。「最初はランダムに確率を設定して、データを見ながら少しずつ調整していく」

「まるで、暗い部屋で手探りで物を探すような感じかな。最初は何もわからないけれど、触っているうちに形が見えてくる」

ベイズ統計との関係

「LDAは実は、ベイズ統計という考え方に基づいているんだ」ちくわ君は新しい概念を紹介した。

「ベイズ統計?」はんぺん君は聞き馴染みのない言葉に困惑した。

「簡単に言うと、『新しい情報を得るたびに、予測を更新していく』という考え方だよ。例えば、雨雲を見て『雨が降る確率は70%』と予測したとする。でも、風向きの情報を得たら『雨が降る確率は85%』に更新する、という感じだね」

「LDAも同じで、文書を一つ読むたびに、トピックの予測を更新していくんだ」

実際の応用例

「LDAって、実際にはどんなところで使われているんですか?」はんぺん君は実用性について尋ねた。

「たくさんあるよ!」ちくわ君は嬉しそうに答えた。「例えば、ニュースサイトでは記事を自動的にカテゴリー分けするのに使っている。Amazonのような通販サイトでは、商品レビューを分析して、『価格』『品質』『配送』などのトピックごとに評価をまとめたりしているんだ」

「SNSでも使われているよ。Twitterの大量のツイートから、今話題になっているトピックを自動的に発見したりね」

「すごいですね!でも、精度はどのくらいなんですか?」

「それはデータの質と量によるんだ。きれいに整理されたデータで、十分な量があれば、かなり高い精度でトピックを発見できる。でも、短い文章や、ノイズの多いデータだと、うまくいかないこともあるよ」

LDAの限界と注意点

「LDAは便利だけれど、注意すべき点もあるんだ」ちくわ君は木の実を噛みながら続けた。

「例えば、トピック数を事前に指定する必要がある。『この文書群には3つのトピックがある』と最初に決めなければならないんだ」

「でも、実際には何個のトピックがあるかわからないですよね?」

「そうなんだ。だから、何度か試してみて、一番良い結果が出るトピック数を探す必要がある。これを『ハイパーパラメータの調整』と呼ぶんだよ」

「また、LDAは『単語の順序』を考慮しない。『太郎が花子を愛している』と『花子が太郎を愛している』を同じように扱ってしまうんだ」

プログラミングでの実装

「実際にLDAを使ってプログラムを書くことはできるんですか?」はんぺん君は実践的な疑問を投げかけた。

「もちろん!」ちくわ君は画面を指差した。「PythonにはGensimやscikit-learnというライブラリがあって、LDAを簡単に使えるんだ」

「例えば、Gensimを使えば、数行のコードでLDAを実行できる。文書を読み込んで、前処理をして、LDAモデルを訓練して、結果を表示する...これだけなんだ」

「前処理って何ですか?」

「文書をコンピューターが理解しやすい形に変換することだよ。具体的には、『です』『ます』のような助詞を除いたり、『走る』『走った』『走っている』を『走る』に統一したりする作業だね」

発展的な応用

「LDAを発展させた手法もあるんだよ」ちくわ君は上級者向けの話題に移った。

「例えば、Dynamic Topic Modelは、時間とともにトピックがどう変化するかを追跡できる。ニュース記事で言えば、『コロナ』というトピックが2020年にどう出現して、どう変化していったかを分析できるんだ」

「Author-Topic Modelは、誰がどんなトピックについて書いているかを分析できる。研究者の論文を分析して、『田中教授は機械学習について、佐藤教授は統計学について書くことが多い』といったことがわかるんだ」

実習の時間

「理論だけでは退屈だろうから、簡単な実習をしてみよう」ちくわ君は新しいファイルを開いた。

「森の動物たちの日記データを用意したんだ。リスの日記、ウサギの日記、キツネの日記が混ざっている。LDAを使って、どんなトピックが見つかるか実験してみよう」

はんぺん君は身を乗り出した。「面白そうですね!どうやるんですか?」

「まずは文書を読み込んで、単語に分割する。それから、よく出てくる単語(『の』『は』など)を除去して、LDAを実行するんだ」

数分後、結果が画面に表示された。

「見て!トピック1には『どんぐり』『木の実』『貯蔵』という単語が多く含まれている。これはリスの行動パターンを表しているね」

「トピック2には『人参』『穴』『ジャンプ』という単語がある。これはウサギの特徴だね」

「すごい!本当にトピックが見つかりましたね!」はんぺん君は興奮した。

評価方法

「LDAの結果が良いかどうかは、どうやって判断するんですか?」はんぺん君は評価方法について尋ねた。

「いくつかの方法があるよ」ちくわ君は説明した。「一つは『パープレキシティ』という指標。これは『予測の困難さ』を表していて、値が小さいほど良いモデルとされている」

「もう一つは『コヒーレンス』という指標。これは『トピック内の単語がどれだけ関連し合っているか』を測るものだ。人間が見て意味のあるトピックほど、コヒーレンスが高くなる」

「でも、最終的には人間が結果を見て、『意味のあるトピックが発見できているか』を判断することが大切なんだ」

今後の発展

日が傾き始めた頃、はんぺん君は満足そうに立ち上がった。「今日は本当にたくさんのことを学べました!LDAって、文書の中に隠れているパターンを見つけ出す魔法のようですね」

「そうだね。そして最近では、深層学習と組み合わせた新しい手法も開発されているんだ」ちくわ君は微笑んだ。「BERTTopicやTop2Vecなど、より精度の高い手法が生まれている」

「でも、LDAは今でも多くの場面で使われている。理解しやすく、実装も簡単で、結果も解釈しやすいからね」

「家に帰ったら、早速自分でもLDAを試してみます!」はんぺん君は意気込んだ。

「それは素晴らしい!最初は小さなデータセットから始めて、徐々に複雑なものに挑戦していこう。何か困ったことがあったら、いつでも聞きに来てよ」

はんぺん君が帰った後、ちくわ君は夕日を眺めながら思った。テキストマイニングの世界には、まだまだ発見すべきことがたくさんある。LDAのような手法を通じて、データの中に隠された知識を見つけ出すことの喜びを、また一人に伝えることができた。

森の研究所には、今日もデータサイエンスの探求心が満ちていた。

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